【化学系】博士後期課程に進学すべきか。そのメリットとデメリット

少なくともこのページを見ているあなたは何かしらの理由で博士後期課程への進学を悩んでいるのでしょう。今回はそんなあなたの役に少しでも立ちたいとこの記事を書くことにしました。ぜひ、参考にしていただけたら幸いです。

化学系の博士進学についての記事です


この博士後期課程への進学というのは分野によって大きく意味が異なります。よくある博士後期課程に関する記事はその人の分野に関する情報であり、博士後期課程を考えている全ての人に当てはまるわけではありません。

ほとんどの理系の世界では、大学の先生になるには博士号の取得が必須であるのにも関わらず、文系の世界ではそうではないこともしばしばです。

理系の中でも、天文学の研究をしている人、数学の研究をしている人、化学の勉強をしている人、生物の研究をしている人、それぞれで「博士後期課程への進学」ということの意味や価値が変わってきます。

今回は、私の専門である化学分野においての博士後期課程への進学について書いていこうと思います。私の専門は有機化学ですが、化学系の同期のことも見てきているので、化学系とくくって話を進めていこうと思います。

進学のメリット

思う存分研究ができる

潤沢な研究環境で好きなだけ研究ができる、これが最高にして最大のメリットではないでしょうか。もちろんですが研究というのはどこでもできるものではありません。

また、企業に入ってしまえば企業の利益を考えて研究しなければなりません。自分の好きな研究などできるわけなく、会社の歯車となって働かなくてはならないのです。それに加えて、企業は残業や安全管理に厳しいために多くの制約の中で研究をすることとなります。

一方、博士後期課程に進学すれば、自分の頭の中で練った研究を自分の手で行い、オリジナルの研究を行うことができます。

もちろん、研究室の方針があるので好き勝手に研究できるわけではないですが、自由度は企業研究者に比べてはるかに高く、何かに役に立つような研究でなくても、学術的に面白い研究であれば好奇心の赴くままに研究することができます。

深夜まで研究を行っても怒られることはなく、本当に自由に研究できる環境が揃っています。

博士号を持つことでしか就けない職業がある

まず一つにあるのは大学の先生です。化学系なら、まず博士を持っていないと就けません。博士をとってから企業に入ってものその後にアカデミアの世界に戻ってくるということもあります。

最近、クライドファンディングを使った研究費集めで有名となった学習院大学の諸藤先生もそうですね(自己紹介 | 有機化学論文研究所)。

一方で、修士をとって就職し、その後大学の先生になったという話は全く聞いたことがありません。もし、アカデミアを少しでも考えているのであれば博士号を持っていて損はないでしょう。

他にも企業によっては管理職に就くために博士を必要としている企業もあると聞きました。ただしこの場合は会社内で優秀な修士の研究者に博士号を取らせてあげるシステムがある場合が多いため、修士からそのまま博士に進学するメリットにはならないかもしれません。

研究職に配属されやすい

博士を持っていれば企業に入った時に研究職に配属される可能性がぐっと高まります。修士で就職した場合、彼らに求められるのはジェネラリストになることなので、研究職に限らず、研究と全く関係ない様々な部署に配属されます。その新しい部署で育てていこうということですね。しかし、修士に比べて3年遅れて入社してくる博士を研究に関係ない部署に配属するメリットがありません。博士は、その研究力を生かした仕事を期待されて採用されるので、研究職に就ける可能性が高いです。

世界基準で博士号は研究者としての最低条件

欧米諸国やアメリカでは博士号を持たない人を研究者として認めない風潮があります。博士は研究者を名乗るための最低限の肩書であり、修士は博士になれなかった人が持つ学位と思っている人も少なくありません。

ドクターとはそれほど権威あるものであり、ドイツでは表札にDr.と書かれているところもあるそうです 笑

こうしたことから、博士号を持っていないと企業に就職してから、海外の研究室に留学する機会があったとしても修士であることを理由に留学を断られてしまうということがあります。

進学のデメリット

お金

大学院生はお金がない。圧倒的にお金がない。基本的に博士は無収入です。それどころか大学に授業料を払わないといけません。

特に浪人などせずにストレートで博士号を取得できれば27歳に大学院を修了するわけですがそれまでお金を払い続ける日々です。

一方、修士で卒業したあなたの同期はどうでしょうか。日本の20代の平均年収は約340万円です。単縦計算であなたの同期はあなたが3年間博士課程にいる間に1,000万円以上稼ぎます。

もちろん、博士後期課程の学生も様々な方法で資金を得ることができますが、この差を埋めることはほとんど不可能でしょう。

日本の企業は年功序列型の給与体制なので博士だからといって特別給料が高いわけではありません。博士の1年目の給料は修士の4年目の給料と同じ会社がほとんどです。博士だからといって特別稼げる世界ではないのです。

博士課程に進むというのは1,000万円の買い物をすることと同義なのです。進学はあなたにとってそれほど価値があるものなのでしょうか。

生活リズム

修士で就職した同期と博士進学した場合のあなたの生活は大きく変わります。

あなたはこれまでと変わらず研究室がメインの生活を送りますが、修士で社会に出た同期は社会のルールに従います。学生時代にはできなかった贅沢を会社の給料で楽しむでしょう。休みの日も増え、旅行に行ったりするでしょう。卒業して2年目から結婚をする人もちらほら出てきます。家を建て始める人もいます。隣の芝は青く見えるものですが、そんな同期を傍目になんのために研究をするのか。博士課程はそうした精神的な面でも大きな負荷を背負うことがあります。

就職の選択肢が狭まる

はじめに言っておきますが、よく言われる「博士に言ったら就職先はない」は化学系に限った話であれば、嘘です。企業に入って活躍している博士の人はたくさんいます。

ただ、選択肢が狭まるというのは正直あります。博士を積極的に採用している企業のほとんどは大企業で、中小企業では博士をほとんど取らないところが多いです。

修士であれば文系就職でも取ってくれる会社はたくさんありますが、博士で文系就職は厳しいです。(なくはないですが)

まとめ

私は博士課程に進学したことを後悔していませんが、進学したもののとても辛い日々を過ごしている人を何人も見ています。やはり一番の決め手は「研究(化学)が好きかどうか」だと思います。自由に研究できる場所は大学以外にほとんどありませんから。

お金なくても研究できて毎日過ごせるならサイコーだー!と言う人は進学するのもいいかもしれません。ただ、1000万円の買い物だと言うことは念頭に置いておいたほうがいいですよ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です