正しい研究室の選びのススメ〜失敗しないための方法論〜

理系大学生は4年生になると研究室に配属されます。短い人は1年。修士までいる人は3年。そして博士まで進学する人は6年以上その研究室にいることになります。

私も博士まで進学し、6年間を同じ研究室で過ごしました。もちろん、良い(自分に合った)だと感じていたので進学を決めれたのですが、研究室配属前に戻れるならその時の自分にアドバイスをしたいことがあります。今回は、そうした視点から研究室配属前の学生さんに向けてアドバイスをしたいと思います。

また、研究室配属に失敗してしまった同期を思い出しながら「研究室選びに失敗しない」方法も教えていければと思います。

研究室選びで一番大事なこと

研究室を選ぶ上で一番大事なこと、それは「卒業したら何がしたいか」です。研究室選びはみなさんが思うより人生における重大なイベントで、どの研究室を選ぶかであなたの将来が大きく左右されてしまいます。

学部で卒業して就職したい

もし学部で卒業して就職したいと思うなら、就職活動に協力的な研究室を選びましょう。研究内容は二の次三の次です。就職活動は学部の3年生から始まりますし、あなたが研究室で何の研究をしようが就職先や職種にほとんど影響を与えません。学部卒で就職する先輩が多い研究室。また、ひたすら楽な研究室を選び、就職活動に全力を注げる環境を整えましょう。

学部卒で就職しようとする学生を嫌う先生もいますのでそのような研究室は避けるようにしましょう。また、ほとんどの学生が院進する研究室では、学部生が就活を行いづらい空気感が流れていますのでやめた方が良いでしょう。

いくら理系でも企業の研究職や技術職に着くには院卒が最低条件となっている場合が多いので、もしそのような理系職に就きたいと考えているなら大学院に進学するのが良いでしょう。

つまり、学部で就職する理系の学生はほとんどが文系職など専門とは全く関係ない場所に就職することになるので、大学4年生は「就職活動と卒業のための単位を獲得するため」に特化した研究室を選びましょう。

修士で就職したい

大学を卒業した後も院に進み、その後就職したいという人です。私のいた大学の学部ではここの割合が最も大きかったです。

修士まで進んで就職したいとなると、研究室選びが就職先に大きく関わってくるので慎重に研究室を選ぶ必要があります。

まず、その研究室の卒業生の就職先を調べます。研究室訪問を行い、先輩方に聞いてみるといいでしょう。卒業生の就職先は研究室の色が強く出ます。大手の化学メーカーにたくさん就職している研究室もあれば、会社の規模の大小に関わらず食品メーカーに特化している研究室や自動車系の就職先に強い研究室もあります。

逆に「この研究室、化学メーカーばっかで食品や化粧品のB to Cメーカーにはほとんど行っていないなあ」というようなこともわかってきます。

企業も理系大学院生の採用活動の際に、専門を見ますので研究室によって業種や職種が偏ってくるのです。

これは研究室に入って色々勉強していけば「この分野の研究室はこういう企業への就活に強い」というのがわかってきますが、大学3年生の時にこれを判断できる人はほとんどいません。なので卒業生の就職先で判断するのです。

例えば、製薬企業の研究職になりたいと思った時にどのような研究室を選ぶのが良いでしょうか。有機合成の研究室が良いと言われていますがその中でも全合成の研究室と反応開発の研究室は製薬企業への就職に強いと言われています。ですが、それと比較して有機構造化学や金属錯体の研究室から製薬企業の研究室になるのは難しいと思います。(筆者の主観も強く含まれています)

一方で全合成の研究室が製薬メーカーや化学メーカーへの就職に強いのに対してそのほかの業種への就職は多いとは言えません。

私の友人の話ですが、全合成の研究室は就職に強いと言われてその研究室に入ったものの、就職先を選ぶ時になってとても困っていました。というのも、その友人は地元である愛知県で就職したいと考えていたのにも関わらず、愛知県には化学メーカーや製薬メーカーの研究所が少なく、選択肢がほとんどなかったそうです。愛知県にはたくさん車関係の企業があるにも関わらず、分野の不一致から自動車関連の企業への就活には苦戦していました。また、教授が有機化学を使わない企業への就職を嫌がっており、最終的には県外の化学メーカーに就職することとなっていました。

そのほかにも教授との相性やブラック度など検討する点は多くありませんが、研究室にいる数年より卒業した後の何十年の方が人生としては長いです。在学中の生活が少し大変でも大学院修了後の人生を一番に考えて研究室を選ぶのがベストな選択だと私は思います。

ただ、体を壊したりメンタルをやられてしまえば元も子もありません。どうしても自分に合わなさそうな研究室、もしくは学生の生活が脅かされる悪評が立つような研究室は避けた方が良いでしょう。

博士で就職したい

もしあなたが博士まで進学したい。もしかしたら進学したくなるかもしれない。という気持ちがあるなら修士の欄で書いたことだけでなくまた違った側面で研究室を選ばなくてはいけません。

まず一つ目は、研究以外の面で有意義に博士課程を過ごせるかです。

例えば金銭的な援助が挙げられます。

博士に進学する学生に研究室からの資金的な援助はあるのか、学振に採択されるためのバックアップを行ってもらえるのか。しっかり確認する必要があります。

もちろん、あなたの実家が裕福で金銭的な支援はいらないという場合もありますが、だからと言ってこの部分を気にしないのはお勧めしません。

なぜなら、金銭的な補助やサポートを行わない研究室は学生を「人件費激安の労働力」として見ている傾向があるからです。

全ての研究室がそうだとは言えませんが、研究費をたくさん持っている研究室であるにも関わらず学生に資金的な援助をしない上に学振のために論文を書くようなことをしない研究室では学生は不満に感じていることが多いです。

後、進学する上で気にするのはその研究室で博士に進学する人が多いか少ないかだと思います。個人的にこれはどちらがいいということはないと感じています。

博士に進学する人が多い研究室は、自分の未来を想像しやすいです。研究室内の過ごし方・後輩の指導の仕方・就活について。基本的に博士の人に向けての情報は少なく、こうした先輩方のノウハウはとても役に立ちますし、将来への不安が軽減されます。研究室としても博士に進学する人がいるのは当然なので毎年進学者がいることを前提に研究室が運営されています。これはいい面でもありますが、修士の延長線上に博士がいるような構図になりやすく、博士人材に求められる自ら切り開いていく力養われないかもしれません。

一方で博士進学者が少ない研究室では、博士進学者は修士の延長線上とは異なる特別な存在として扱われることが多いです。その分責任は増しますが、研究における裁量権は多く、助教に近い働きを求められることもあります。

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