有機化学系の研究室はどんなところ?ブラック?就職先は?

初めまして。私は学部の4年次から博士後期課程修了まで約6年の間、有機化学系の研究室で研究生活を行ってきました。
この記事ではこんな私の経験談を交えつつ、有機化学系の研究室とはどんなとこかを紹介していきたいと思います。
高校で有機化学を勉強して少し気になってる方、大学選びの参考にしたい方、研究室選びの参考にしたい方の力になれればと思います。


有機化学系の研究室では何をする?

有機化学と一言で言ってもその分野は多岐に渡り、研究室によってやっていることは大きく変わります。反応開発、天然物合成、有機金属錯体合成、構造化学などたくさんありますが、ほとんどの分野で共通することは「新たな分子を創造する」ことだと思います。

有機化学は目に見えない分子を操る学問であり、新しい分子を生み出したり、効率的な分子変換方式を生み出すことに学術的な意味を見出しています。これまで1億を超える新たな分子が合成され、論文として発表されていますが、まだまだものすごい勢いでその数を増やし続けてます。CAS番号の登録が1億個突破! | Chem-Station (ケムステ)

未だこの地球上に存在しなかった新たな分子を作り出すことができるのが有機化学という学問です。自分の生み出した分子が、ものすごい機能を発現し、将来世界を変えるかもしれないと思うとロマンがありますね。

ブラックなのか

ブラック研究室には2種類存在すると言われています。放置系ブラックと激務系ブラックです。

前者は、教育機関である大学であるにも関わらずにほとんど指導を行わずに放置されてしまう研究室で後者は長い拘束時間に代表されるような束縛の強い研究室です。

有機化学系の研究室は後者の激務系ブラックと言われることが多いですし、私自身もそう思います。

研究室の多くは「コアタイム」というものを設けています。コアタイムというのは「朝は○時にはきて夜は○時をすぎてから帰ってね」というものです。企業では「8時に来て定時の17時になったら帰りましょう」というのが一般的でしょうか。労働基準法があるので企業は長い時間、社員を拘束できません。

しかし、有機化学系の研究室は「朝9時から夜の9時までコアタイム」ということも普通にあり得ます。最近多いのは「朝来る時間は決まってるけど帰る時間は定めないよー^^」という研究室です。こういう研究室のほとんどは、みんなが早く帰らないので結局夜遅くまで実験しています。また、土曜日も研究室に来るように言われるところも多いです。

上記のように、研究室のルール的にブラックになっている部分に加えて学生によって自主的にブラックになっている面もあります。ただでさえ大変だとされている有機化学の研究室に入ってくる学生は真面目で努力家でやる気のある人が多い傾向にあります。そういう学生が集まる研究室では、コアタイムを過ぎても日がまたぐまで実験をしたり、休みであるはずの日曜日に研究室に人が集まったりということが常習化しています。

色々と書いてきましたが、研究室の忙しさは「研究室による」ということを忘れないでください。有機化学だから絶対ブラックということはありませんし、そもそもブラックと感じるかどうかは本人次第です。

就職は?

有機化学系の研究室は基本的にいいと思います。製薬メーカー・食品メーカー・化粧品メーカー・化学メーカーなどいろんなところに就職口があります。分子を操る有機化学はものづくりの基礎であるため需要が大きいのです。
就職先については別で記事を書きましたので参照してください。
有機化学・有機合成を学んだ後の就職先はどんなところがある?

どういう人が向いてる?

まず第一に有機化学・研究が好きな人です。ただでさえ、拘束時間が長く大変と言われている有機化学の研究室では、研究を楽しめなければただただ辛い場所になってしまいます。研究活動を「楽しいこと」と思えるなら、大学の研究室以上に熱中して研究に集中できる場所はありません。
次に「体力・ガッツがある人」です。めちゃ古臭い昭和的な考えだなと思う方もいるかもしれません。しかし、現状、大学の研究室の学生には労働基準法は適用されませんし、政府や大学が「学生をあんま拘束しないでね」と言ってくれるわけでもありません。研究室のルールは教授が作り、それにみんな従う、そういうことがまかり通ってる古臭い世界なんです。

夜の21時に帰ろうものなら「え、もう帰るの?」と言われたり、土日返上で学会の資料を作成したりということも普通にあります。

また、有機化学という研究分野そのものが泥臭く、多くのトライアンドエラーを繰り返すことで成果を出す確率を上げています。頭がいいからといって、成果が出せるとは限らないのです。それよりも手を動かして一つでも多くの実験を行った方が良い結果に結びつくことが多いです。つまり、有機化学の知識がほとんど無くとも、ガッツさえあれば先生の指示を聴きながらたくさん実験することで、大きな成果を上げれる分野でもあります。よく言えば有機化学は努力の実る可能性の高い分野だと私は思っています。

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