有機化学関連の研究室に所属していれば就職先として製薬企業の研究職を一度は考えるものです。
なんとなく「製薬企業の研究職になるぞ!」と思い就職活動を始めてみると、エントリーシートや面接でメドケム(メディシナルケミスト)希望なのかプロセス(プロセスケミスト)希望なのか聞かれることになるでしょう。
んー、メドケム?プロセス?何が違うの?という方のために簡単に、2つの職種の違いや、それぞれの仕事内容について話していこうと思います。
メディシナルケミストとプロセスケミスト
メディシナルケミストはいわば薬の種を見つけて育てる仕事です。
化合物ライブラリのスクリーニングで薬効があると判断された化合物の構造を見て、
新たなデザインを考え、合成しそれを細胞やマウスを使って評価してもらいます。
その後、返却された評価(薬理活性・安全性・物性)のパラメーターを見て
より良いパラメーターになるようにまたさらにデザインを考えて、合成して、というサイクルを回しながら化合物を育てていきます。
研究室で行う、触媒開発や配位子のデザインをしていくイメージに近いです。
最終的に満足のいくパラメーターに仕上がった化合物は人を使った臨床試験へと進んでいくことになります。
一方、プロセスケミストは化合物合成のスケールアップを担う仕事です。
細胞やマウスを使って評価していた時は化合物が数mg〜数百mgあれば十分評価できていましたが、人が試験の対象になると必要な量も数kgと一気に多くなります。
さらに試験を通過して市場に出るとなればトンスケールでの供給が求められてきます。
そのため、メドケムの合成ルートを見直し、工場で大量合成ができるようなルートを見出すのが必要になってくるのです。
必要とされる知識
二つとも有機合成の知識と技術は大前提として、入社後どのような知識が必要となってくるのでしょうか。
まず、メディシナルケミストは創薬に関する超幅広い知識が必須となってきます。
具体的には、生化学、生物物理、薬物動態学、薬理学、薬学、毒性学などになります。
これらの知識を総動員して化合物デザインを行ったり、バイオロジストとディスカッションをおこなったりします。
また、近年ではAI創薬の発展やモダリティの多様化により
メディシナルケミストがカバーすべき分野が広がっており
古典的な低分子創薬手法に加えて新たな専門性を取得する傾向にあります。
プロセスケミストは有機化学の知識が中心となります。
新しいモダリティなど新しい知識を必要とされる場面もありますが
メディシナルケミストほどではありません
スケールアップを目的とした有機化学の専門性を深めていく方向になるので
化学メーカーへの転職も有利とされています。
どっちがええんや
正直、好みの問題ですが個人的にはメディシナルケミストがおすすめです。
やはり自分がデザインした化合物が世に出て人の命を直接的に救うとなればこれ以上のやりがいはありません。
一方で、上市品に携わることなく会社員人生を終える人も多くいるのが事実です。
そういった面では、臨床入りする可能性の高い化合物に携われるプロセスに軍配が上がります。
コメントを残す